令和2年度(2020年度)広島大学国語大問2の解説:問1~問2

広島市安佐南区大町にある難関大学文系対策専門塾、進学空間Move 高校部の小林です。

この記事では、令和2年度(2020年度)広島大学2次試験国語大問2の解説をします。

広島大学合格のための対策や受験勉強に役立ててください。

広島大学国語の大問2

広島大学国語の大問2では、古文が出題され、7~8つの問いが提示されます。

出典の特徴としては、史実に基づいた内容と内面描写に主軸が置かれた内容がほぼ交互に出題されるということが挙げられます。

重要語句の意味、文法、現代語訳、説明問題などを中心として、ほぼ例年100字程度の記述問題が出題されることにも注意しておきましょう。

2020年度は本文に和歌が6首あったため、かなり難度が高いと感じた人も多いと思います。

けれども、苦手なものを苦手なまま、志望校の入試に挑むことはありません。

Z会の「SPEED攻略10日間シリーズ」や駿台文庫の「三十一文字で古文を攻略!和歌で身につく古典文法」、東進ブックスの「吉野のパワーアップ古文 和歌の修辞法編」などを利用して、苦手意識を払拭しておきましょう。

問1:語の識別〈「せ」の識別〉

広島大学の語の識別問題では、選択肢形式が一時導入されましたが、記述形式に再び戻りました。

求められるのは、以下の情報です。


①品詞

②用言⇒活用の行と種類、助動詞⇒意味

③基本形

④活用形

⑤敬語⇒敬語の種類、本動詞・補助動詞の区別


令和2年度の問題では、以下のような条件付けがなされています。

例 存続の助動詞「たり」の連体形活用語尾

(助動詞の意味+品詞+基本形+活用形)

与えられた例に沿って、過不足なく解答していきましょう。

語の識別問題は、識別の基準を頭に入れておくと素早い解答が可能になります。

今回求められている「せ」の識別の場合は、以下の基準を持っておくとよいでしょう。

①自立語で(~する)と訳せるなら ⇒ サ行変格活用動詞「す」の未然形 (複合語の活用語尾の場合に注意)

②未然形につくなら ⇒ 使役 or 尊敬の助動詞「す」の未然形 or 連用形 (意味と活用形に注意)

③反実仮想の公式があるなら(せばーまし/ませばーまし/ましかばーまし) ⇒ 過去の助動詞「き」の未然形

解答の順序としては、

後ろの語を確認し、傍線部の活用形を考える

の語の活用を確認し、傍線部の語を決定する

③助動詞であれば、意味の判別基準を参考に、文脈に沿って意味を確定する

という流れをおススメします。

では、実際にやってみましょうか。

①口包ま

⇒ 接続助詞「て」は上に連用形をとります。この時点で助動詞「す」の連用形が濃厚です。

⇒ マ行四段活用動詞「包む」の未然形が前に来ていますから、助動詞「す」の連用形が確定します。

⇒ 助動詞なので、意味を判別します。使役・尊敬の助動詞「す・さす・しむ」の意味の判別基準は以下の通りです。


尊敬語を伴わない「す・さす・しむ」は使役

②尊敬語を伴う場合は使役or尊敬(二重尊敬になる)で文脈判断 ⇒ 動作主は誰かに注目(高貴な人物は家臣に行動させるのが多いことにも留意)


ということで、今回は尊敬語を伴っていないので「使役」の助動詞「す」の連用形で決まりです。

②立ち入ら給ふこと、

⇒ 尊敬の補助動詞「給ふ」があります。補助動詞は用言にあたりますから、「せ」が連用形、つまり、助動詞「す」の連用形が濃厚です。

⇒ ラ行四段活用動詞「立ち入る」の未然形が前に来ていますから、助動詞「す」の連用形が確定します。

⇒ 助動詞なので、意味を判別します。この会話文の話者は宿の女房であり、「家なんていっぱいあるのに、こんなみっともないあばら家にくるのも納得です。あなたたちのお話を盗み聞きしてみたら、なんだか思い詰めてて痛ましいんですもの」と語りかけている場面ですよね。家に「立ち入」るのは曽我の人々ですから、宿の女房が武士である曽我の人々をひっつかまえて「泊まれ!」と使役するわけがありません。鎌倉時代が武士の力が増している時代だということを考慮するまでもなく、宿の主人と客との関係性だけを考えても異常です。

ということで、「尊敬」の助動詞「す」の連用形で決まりです。

③見参ら侍るに、

⇒ 丁寧の補助動詞「侍り」があります。補助動詞は用言にあたりますから、「せ」は連用形だと分かります。

⇒ ただし今回は、前に「参ら」があります。よって、この語が「参る」の未然形なのか。「参らす」の語幹なのかを判別する必要が出てきます。では、重要語「参る」と「参らす」についてまてめておきましょう。


参る(まゐる) 

尊敬の本動詞〈召し上がる〉

②謙譲の本動詞〈差し上げる/参上する〉

参らす(まゐらす)

①謙譲の本動詞〈差し上げる〉

②謙譲の補助動詞〈~し申し上げる〉


では、「見参らせ侍る」の主語は誰でしょうか。

「侍る」という丁寧語に注目しましょう。


丁寧語

①地の文に用いられる場合 ⇒ 作者から読者への敬意

②会話文や手紙などに用いられる場合 ⇒ 話者(書き手)から聞き手(読み手)への敬意


上記の丁寧語のポイントをおさえておくと、この会話文の話者である「女房」が「見参らせ侍る」の主語であることが分かりますよね。

動作の受け手に敬意を示している時点で、謙譲語は確定。

「見る」という動詞に付いて、謙譲の意味を付け加えているので、補助動詞。

ただ、正直ここは「見」にくっついているから補助動詞だ!⇒ 謙譲の補助動詞「参らす」だ! と判断してしまってもいいんですけどね。

丁寧語のお話をするために、あえて遠回りをしました。

解答は、謙譲の補助動詞「参らす」の連用形活用語尾となります。

問2:短語句の現代語訳

短語句の現代語訳問題では、以下のポイントを意識して訳出していきましょう。

①重要語句の意味が多義的である場合、最も文脈に合う意味を選択する

接続や助詞・助動詞の訳出など、見落としがちなポイントも過不足なく訳出する

③内容が省略されていたり、補足しなければ意味がつかめないものは、補足した上で訳出する

では、アからいきますね。

妾 / に / 過ぎ / たる / 者 / よも / あら / じ


・妾(わらは):女性の謙称

・たる:完了・存続の助動詞「たり」の連体形 / 存続 ⇒ 完了の順で訳し、存続で訳せるならば「存続」の助動詞とすればよい

・よも~じ:まさか~あるまい / 「じ」は未然形接続の助動詞で、打消意思・打消推量を意味する。主語の人称で判別するという手があるが、どちらも「~まい」と訳せば意味が通る


上のポイントを踏まえて訳すと、〈私を超えている者はまさかいるまい〉となりますが、どういった点で〈超えている〉のか意味が分かりません。

ですから、前後続文脈を踏まえて意味を補足してあげましょう。

〈世の中に物思ふ者多く侍れども、〉とありますから、「私は誰よりも〈物思〉ってる!」ということですよね。

女房はこの後、自分の身の上を語りだします。

継母に憎まれ、夫に従い、夫と子どもを失い…。

辛い、本当に辛い身の上です。

つまり、彼女の物思いとは「悲しみ」なんですね。

解答は、 私 / よりも / 嘆きが多い者は / まさかいるまい となります。

ポイントは以下の4点でしょう。

・「妾」の訳出

・「過ぎたる」の訳出

・「過ぎたる」内容の訳出

・「よも~じ」の訳出

次はイの解説にいきましょう。

由なき / 事 / を / 思ひ / けり


・由なき:形容詞ク活用「由なし」連体形 / ①理由がない ②方法がない ③つまらない ④関係がない

・けり:過去・詠嘆の助動詞「けり」の終止形 / 会話文・和歌中では詠嘆で訳してみる


ここでは、夫と子の仇の首を見たときに喜んでしまった自分の罪深さを悔い、仏の道に目覚めたというお話をしています。

「由なき」という多義語の解釈に適当なのは、③の意味でしょう。

解答は、 つまらない(無意味な・くらだらない・無益な・とりとめもない) ことを / 思ったことだなぁ(思ったものですねぇ:あくまで女房が曽我の人々に話しているため、丁寧語を踏まえて訳す方が自然ではある) となります。

ポイントは以下の2点です。

・「由なき」の文脈に沿った訳出

・詠嘆の助動詞「けり」の訳出

ウの解説に入ります。

過ぎ行き / 侍へ


・過ぎ行き:過ぎていき

・侍へ:係助詞「こそ」の結びの語であるため、丁寧の補助動詞「侍ふ(さぶろふ)」の已然形


非常に易しい問題ですが、「過ぎ行き」を「過ぎていき」と訳しても、文脈に合いません。

「今はただ亡くなった人たちのために念仏を唱えながら~」という話をしているわけですから、「過ごしている」という訳が適切でしょう。

解答は、 過ごして (暮らして) / おります となります。

ポイントは以下の2点です。

・「過ぎ行き」の文脈に沿った訳出

・「侍へ」の訳出

最後の問題、エの解説です。

いとほしき / 御 / 事 / に / こそ / 侍へ


・いとほしき:形容詞シク活用「いとほし」 ①気の毒だ ②かわいい 困る

・御事:尊敬の接頭語「御」がついているため、それを反映した訳を心がけたい

・侍へ:丁寧の本動詞「侍ふ(さぶらふ)」已然形〈あります・ございます〉

侍り・さぶろふ

①謙譲・本動詞〈お仕えする / おそばに控える〉

②丁寧・本動詞〈あります / ございます〉

③丁寧・補助動詞〈~です・ます〉


女房は、敵討ちに燃える曽我の人々を見て、かつての自分の姿と重ね合わせているわけですよね。

〈かたがたの御有様を見参らするに〉、彼らの姿を見るとどう感じるんでしょうか?

「かわいい(⋈◍>◡<◍)。✧♡」と思うんですか?

「困る”(-“”-)”」と思うんですか?

「気の毒」に思っていることは想像できてくださいね。

さて、直訳すると〈気の毒なことでございます〉ですが、これだと「御」の尊敬部分が訳出できていませんよね。

ですから解答としては、 気の毒な / ご様子で / ございます (気の毒なご様子に見えます) が適切でしょう。

ポイントは以下の3点です。

・「いとほしき」の文脈に沿った訳出

・「御事」の訳出

・「侍へ」の訳出

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です