令和2年度(2020年度)広島大学国語大問1の解説:中編

広島市安佐南区大町にある難関大学文系対策専門塾、進学空間Move 高校部の小林です。

この記事では、令和2年度(2020年度)広島大学2次試験国語大問1の解説をします。

広島大学合格のための対策や受験勉強に役立ててください。

問4-1:抜き出し問題

傍線部③に「こうしたことから言えるのは、「尊厳死」という言葉が、なにか特定の行為(内容)を指すというよりは、ある種のイメージを伝える言葉であるということだ。」とある。「ある種のイメージ」とはどのようなイメージか。それを具体的に表す語句を本文中から二つ抜き出せ。

まずは、傍線部の内容から理解していきましょう。

傍線部の冒頭に「こうした」という指示語がありますから、前の内容を確認していきます。

以下が、傍線部の前に書いてある内容のポイントです。

①オレゴン州尊厳死法の是非をめぐる住民投票の前に、安楽死協会がアンケートを行った。

②欧米において、「尊厳死」という言葉は「医師幇助自殺」を指すことが多く、積極的安楽死を含むこともある。

③しかし、「尊厳死」という言葉が、圧倒的多数で選ばれた。

つまり、傍線部内にある「なにか特定の行為(内容)」の内容が③にあたり、それを不可視化する形で②という結果に至ったことが分かりますね。

では、なぜ「医師幇助自殺」「積極的安楽死」を含んだ内容を合法化する際に、「尊厳死」という言葉が選ばれたのでしょう?

傍線内には「尊厳死」という言葉が「ある種のイメージを伝える」ものだと言っています。

「尊厳死」という言葉のもつ”耳聞こえの良さ”のことを言っているのでしょう。

それを言い換えた表現を探していくわけですね。

抜き出し問題であっても、解答を想定した上で探し始めるのは鉄則ですよ。

さて、後続文脈を探していくと、p4の9行目冒頭に解答が見つかります。

「尊厳死」という美しい言葉が初めから「良いもの」という含みをもっているのとは逆に、

解答は、 美しい、良い(もの) となります。

問4(2):本文内容の要約

筆者は、「尊厳死」という言葉のイメージが、「オレゴン州尊厳死法」の成立にどう関わったと述べているのか。本文の内容に即して説明せよ。

問3とは違い、「本文の内容に即して」とありますから、本文の言葉そのものを用いるのではなく、その内容が要約できていれば良いのだと考えましょう。

問4(1)で、「尊厳死」という言葉が、「美しい」「良いもの」であるというイメージを付与するものだということは分かりました。

あとは、「オレゴン州尊厳死法」成立までの流れを整理してあげれば良いわけですね。

求められている構図は、以下の通り。

「尊厳死」という言葉の持つ美しいイメージが、~という形で関わって、オレゴン州尊厳死法の成立に貢献した。

で示した部分を埋めてあげる問題になります。

さて、問4(1)の解説部分でまとめた、傍線部を含む段落の要約をもう一度以下に提示します。

①オレゴン州尊厳死法の是非をめぐる住民投票の前に、安楽死協会がアンケートを行った。

②欧米において、「尊厳死」という言葉は「医師幇助自殺」を指すことが多く、積極的安楽死を含むこともある。

③しかし、「尊厳死」という言葉が、圧倒的多数で選ばれた。

「尊厳死」という言葉は美しいイメージを持つものの、その実態は②のようなものです。

筆者は②の内容を、傍線部の直後でこう説明しています。

「尊厳死」という言葉は、そもそも括弧つきでしか使えない。なぜならそれは「尊厳のある死」一般を指すのではなく、「尊厳のない状態で生きている」と見なされる人、あるいは延命のための医療的な介入によってそうなるであろうと見なされる人を「死なせる」ないし「そういう介入をしない」ことによって「尊厳ある死」を実現しようとする、特定の行為ないし不作為を指すからだ。

安藤泰至「生命操作システムのなかの〈いのち〉ー生の終わりをめぐる生命倫理問題を中心に」による

大変手厳しい指摘です。

「尊厳死」は美しいイメージを与える言葉だけれども、「括弧つきでしか使えない」、つまり、その美しさは条件付きの限定的なものだ、と言っています。

なぜなら、社会が「尊厳がない」と見なした生に、恣意的な介入・不介入〈人為的なコントロール=特定の行為ないし不作為〉をしているからです。

そういった過酷な内実を、美しいイメージによって不可視化、隠蔽してしまっているんですね。

「医師幇助自殺」「積極的安楽死」といった言葉を使ってしまうと、それと向き合わざるをえなくなる。

それを巧妙に回避しているんです。

ここまでの内容をまとめてあげましょう。

以下が解答例です。

①「尊厳死」という言葉は美しいイメージを持つため、 / ②社会が恣意的な価値観に基づいて人命を操作するという法の内実を / ③不可視化し、 / ④オレゴン州尊厳死法の是非をめぐる住民投票において人々が受ける印象を変容させ、法の成立に寄与した。

① ⇒ 「尊厳死という言葉のイメージ」の具体化

② ⇒ 「尊厳死」の内実についての具体化

③ ⇒ 法の成立への関わり1(原因)

④ ⇒ 法の成立への関わり2(結果)

問5:同義換言問題

傍線部④に「いかにしたら「尊厳ある生」を守り、支えることができるのかを問う前に、「死なせる」によって尊厳が守られる、という安易な対処がいかに危険であるか」とある。筆者は何を「危険」視しているのか。説明せよ。

説明問題は全て「同義換言問題」だと言いました。

要素ごとに文節して言い換えるという手法を用いるのが基本です。

まずは、傍線部の分析から参りましょう。

「尊厳ある生」を支えるための医療やケアが不十分ななかで、 / いかにしたら「尊厳ある生」を守り、支えることができるのかを問う前に、 / 「死なせる」によって尊厳が守られる、という安易な対処が / いかに危険であるかは明らかであろう。

安藤泰至「生命操作システムのなかの〈いのち〉ー生の終わりをめぐる生命倫理問題を中心に」による

傍線部を一文に戻すと明確になりますが、の部分の検討無しに「死なせる」という対象に出ることが「安易」だと批判をしているわけですよね。

また、安易な死の選択によりもたらされる弊害を、以下のように語ってもいます。

そもそも「尊厳」とは何なのか、ということはここでは置いておくとしても、さしあたり次の二つのことは強調しておかねばならない。

(中略)

もう一つは、「尊厳死」という言葉によって、その前提になるような「尊厳のない状態」「尊厳のない生」が何によってもたらされているのか、という問いをきちんと問うことが妨げられてしまうという点だ。

安藤泰至「生命操作システムのなかの〈いのち〉ー生の終わりをめぐる生命倫理問題を中心に」による

これらの内容をまとめてあげれば良いわけですね。

解答例は以下の通りです。

①死が尊厳を守るという固定化された価値観に沿って、②安易に死を選択してしまうことで、③「尊厳ある生」を支える医療やケアの充実を図ったり、④「尊厳のない状態」をもたらしている原因を問い直す視座を失ってしまうこと。

① ⇒ 「「死なせる」によって尊厳が守られる」の言い換え

② ⇒ 「安易な対処」の言い換え

③ ⇒ 「いかにしたら「尊厳ある生」を守り、支えることができるのかを問う前に、」の具体化1

④ ⇒ 「いかにしたら「尊厳ある生」を守り、支えることができるのかを問う前に、」の具体化2


中編、ということは後編があるわけです。

問6、問7は後編で解説いたしますね。

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